電流制御式昇圧チョッパの制作

こんにちは.今回は,電流制御式の昇圧チョッパを制作したので簡単にまとめます.

背景

工作ネタの一つとしてEMLがあります.Electro Magnetic Launcherの略で,要は電磁気的な力でモノを飛ばします.検索するとレールガンとかコイルガンとかの作例がたくさん出てくると思います.レールガンは導体でできたレールに電気を流して弾を飛ばし,コイルガンは電磁石が磁性体を引き付ける力で弾を飛ばします.

これらのコイルガンやレールガンには大きな電流が要求されます.とはいえ加速させる時間は短いので,「一瞬でいいので大電流が取り出せる」回路が必要です.通常の電源やバッテリーだと電流が制限されるので,エネルギーを一度コンデンサに貯める方法がしばしば用いられます.コンデンサに貯めた電気を一気に加速装置に流すことで,瞬間的に大電流を得られます.

私も数年前にコイルガンを制作していました.検索したら簡単に出てくる昇圧回路を使用していたのですが,作り直したいと思い今回改めて昇圧回路を制作しました.

昇圧チョッパ

昇圧チョッパは入力電圧より高い直流電圧を作る回路です.これ自体は特別なものでもなく,様々な場所で使われていると思います.コイルに電流を流した後に電流を止め,コイルが電流を流し続けようとする力を取り出すといったイメージです.

ざっくりとした回路はこんな感じ.このFETを適当にオンオフすると電源より高い電圧が出力されます.たとえば555タイマーを使った固定周波数,固定Duty比でもいいのですが,Duty比を次のように設定するとコイルに流れる電流がいい感じになるらしいです.

 Duty = 1 - \frac{V _ {IN}}{V _ {OUT}}

この式から,昇圧チョッパでコンデンサを充電する場合はコンデンサの電圧に応じてDuty比を変えないといけないことが分かります.実際にはFETがオフの時間が変わるのでPFMになる気がします.FETのオンとオフの時間を適切にしないとコイルの電流が流れすぎたり,逆に空白の時間が出来たりするらしいです.マイコンなどを用いてコンデンサの電圧を監視してもいいのですが,今回は電流を直接監視して電流をいい感じにします.

図にするとこんな感じです.コイルに流れる電流をハイサイド電流計測アンプで監視し,アンプの出力を555に入力します.今回は555をヒステリシスコンパレータのように使い,電流値がある値を超えたらFETをオフにし,ある値を下回ったらFETをオンにするといった制御をします.電流を直接監視しているのでDuty比の計算をすることなく勝手に一定の電流振幅に収まります.

  • この辺りの話はぽんずさんのブログにまとまっています.私もこの回路を制作するにあたり参考にしました.

制作

毎度のごとく秋月縛りで制作しました.電流センサにはLT6106を使っています.基板発注後にICが在庫切れになっていました.危なかった.
コンデンサの充電を止めるためにコンパレータと可変抵抗も取り付けました.ICの電源は適当にレギュレータを使っています.あとLEDも適当につけてピカピカさせてます.

動作

動きました.

アマプラのセール期間に空から降ってきたオシロがあるので,波形を見てみます.

青がコンデンサの電圧,黄色が電流計測アンプの出力波形です.黄色の幅がおおよそ一定に保たれているのでちゃんと動いてそうです.

電流計測アンプの波形拡大

上が充電初期で下が充電終了前です.Duty比(と周波数)が変化しているのが分かります.

コンデンサの充電時間測り忘れましたが,出力は小さいです.電流の平均はたぶん2Aくらいなはずです. 発振する周波数が可聴域なので,キュイーンって音がします.

波形をよく見ると電流振幅が若干大きくなってるんですよね.ゲートドライブIC使っていないからスイッチングが遅くなっているためな気がします.まぁギリ動いてるからいいや.

まとめ

今回は昇圧チョッパを作りました.制作してから気付いたのですが,ぽんずさんのブログのコメント欄にこれとほぼ同じことが書かれています.なので新規性は無いです.ゲートドライブとか出力とか改善したいところはいくつかありますが,一旦動いたので良しとします.致命的な欠陥が見つかればまた作り直すかもしれません.

おまけ

実は動いた基板は2枚目です.1枚目は設計ミスにより消えました.低い電圧のレギュレータを使ったらFETが十分にONにならなくて発熱で焼けたり,レギュレータを外して無理やり外部から電圧供給してたらコンパレータの耐圧をオーバーして壊れたり,こんな試行錯誤してるうちにパターンが剥がれたりしてます.皆さんもデータシートはよく読みましょう.

宙に浮くFETやレギュレータ